HOME > 技術論文 >> 安芸市岡地区12.1haを灌漑する大規模な農業用ため池堤体改修工事(高知県安芸市伊尾木 竜王池)

技術論文

道交国第1 -58号 国道493号(北川道路)道路改築工事

令和3年度 高知県優良建設工事


有限会社礒部組
元久 卓


1. はじめに 

地域高規格道路阿南安芸自動車道は、近年頻発する豪雨災害や南海トラフ巨大地震が発生した際の「命の道」、すなわち、住民にとってはなくてはならない道路として位置づけられている(写真-1 )。本工事区間は、その高規格道路を構成する北川道路2-2工区の一部であり、そのうち和田トンネル区間(総延長L=4.0kmのうちL=3.4km)は、令和5年度の開通を目指し、各工事が急ピッチで進められている。


2. 工事概要

  • 工事番号 道改国 第1 -58号
    工事名 国道493号(北川道路)道路改築工事
    請負金額 88,517,000円
    着工 令和2年7月14日
    完成 令和3年1月25日
    施工延長 L=35.9m
    函渠工 L=17.9m
    軽量盛土工 L=9.9m
  • 写真-1 事業PR看板



3 . 工事の特性

当該工事現場は、和田トンネルの終点部と柏木1 号橋との接続部に位置し、平成30年度より、下部工を始めとして一連の工事が継続して施工されてきた。本工事はそのうち、函渠との一体構造で一般車両が通行するA 1 橋台に取り合わせをするボックスカルバートの施工が主たる工種であった。
本工事と時期を同じくして複数の工事が発注されていた。@和田トンネル本体工事A同トンネルを終点側から掘削するための工事用道路を国道迂回路として使用していた既設仮桟橋を嵩上げすることによって造るトンネル工事用道路工事、B現道路側擁壁を軽量盛土工法で築造した後に舗装仕上げをし、道路を迂回路から切り替える現道切り替え工事、C坑口周辺の落石対策工事、D本工事、の5つである。それら5件が相互に関係性を持ち影響しあっている中での施工であった。また、本工事で構築するボックカルバートは、延長17.9m、体積が945m3と大型で、内空断面が6.50×6.50=42.0m2の重要構造物対象工事であり、その施工には、従来にも増した十分な配慮が必要であった。
そのような特性における課題や問題は様々あったが、本稿ではその内から「BIM/CIM を活用したフロントローディング」への取り組みについて説明する。


4 . BIM/CIMを活用したフロントローディング

上記施工特性のような状況下で、本工事はもとより、関係する各工事それぞれにおいて、開通から逆算した事業全体のスケジュールに沿って全体の進捗が遅滞しないよう、それぞれの施工調整を図り、実行することが求められた。そこで、課題や問題を工事の初期段階で抽出し顕在化させるために、BIM/CIM を活用したフロントローディングを行うことによって問題解決を図った。
まず、測量専用高精度ドローン(RTK型)と地上レーザー型スキャナにより取得した点群データを用いて現況地形および既設構造物を3 次元モデル化した。次に、本工事を含めた関連工事全体の設計3 次元モデルを作成し(図-1)、それらを合成したモデル上に時系列で表現することで( 4 D シミュレーション)諸問題を検討した。

図-1 関連諸工事を含めた3次元モデル

 

図-2 現況モデルと設計モデルを合成

以下にいくつかの具体例を示す。

@後続工事の電気施設が暗渠排水管に干渉することが判明したため、電線管路の材料およびルートを変更した(図-3)。埋設管は、その平面と縦断線形が屈曲部の細かな半径に至るまで決められた材料で施工されるものであったため、完成に約2ヶ月を要する受注生産品であり、事業そのものが大幅に遅滞する可能性があったが、事前チェックによりそれを避けることができた。

A仮桟橋支柱が軽量盛土擁壁中に位置していることが判明したため(図-4)、支柱を無くして張り出し構造に変更し、施工ロスを回避することができた。

図-3 電気施設と排水管の干渉

 

図-4 仮桟橋支柱と軽量盛土の干渉

Bボックスカルバートの底版は段切り形状で、かつその基礎がΦ2500の深礎杭という構造であった(図-5)。深礎杭については前回工事で施工済みであり、本工事の底版と同時にフープ筋の組立てをすることとなっていた。そこで、底版と深礎との剛結部の配筋3 次元モデルを作成して検討したところ、干渉することが判明した(図-6)。これについては、2次元図面では表現することが困難であり、3次元モデルで事前チェックをしていない場合には、施工時に判明し、そこから検討をする可能性が大きかったが、早期に気づき変更することで遅れを回避することができた。

図-5 ボックスカルバート断面図

 

図-6 深礎杭と函渠底版の配筋干渉

弊社では、平成24年からCIMに取り組んでおり、3次元モデルで施工内容を「見える化」するように努め、発注者や地元住民とより良いコミュニケーションを構築することを通じて問題を前倒しして解決するように してきた(=フロントローディング)。

いわゆるフロントローディングとは、元々は製造や開発の分野で使われてきた用語であり、製品の製造やシステム開発などのプロセスにおいて、初期工程に重点を置き、集中的に労力・資源を投入して後工程で発生しそうな負荷(仕様変更等)を前倒しすることで、品質向上や納期短縮を図る活動をいう。公共建設工事にそれを当てはめると、事業の上流、すなわち計画設計段階が該当するが、施工段階に用いてもその効果は大きい。下のグラフ(図-7)における青実線(=従来のプロセス)にある山を早い段階(赤破線=目標とするプロセス)に持ってくることができれば、変更容易性が高まり、変更コストは少なくなる。つまり、少しでも早く問題解決をすることが、現場や会社の利益になり、さらに事業全体の利益となり、ひいては住民の利益につながっていくという効果を生み出す。本工事でもその考えに基づき、関連諸工事との調整や、様々な問題や課題を工事の初期段階で解決することで、工程の遅延や工事における損失を防ぐことができた。

図-7 公共工事の施工段階におけるフロントローディングの概念図


5 . おわりに

  • 以上の例で3 次元モデルの作成に関わったのは、技術者としての経験年数が浅い若手職員であったため、その結果が施工にどういう影響を及ぼすかの判断はできなかったが、それについてはベテラン職員が受け持ち、(写真-2)。実経験は浅くても新技術を習得した若手と、新技術には疎いが長年培った技術と経験があるベテランが協力し、チームワークで早期に問題を解決し、本工事のみならず、事業全体の遅れを回避することができた。今後も同様に、ベテラン、中堅、若手が一体となって、社内の智恵と技術を融合し、互いにシェアしながら工事に携わっていきたい。

  • 写真-2 3次元モデル検討状況