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技術論文

復旧第4号 勝賀瀬復旧治山工事

平成25年度優良建設工事施工者表彰 「高知県知事賞」

有限会社森木組 村山 高教有限会社森木組 村山 高教

 

1.はじめに

当工事は、いの町の三ツ内林道と近接した現場で、0.3haに及ぶ山腹崩壊の災害復旧工事です。法切工は 前年度に施工済みで、法面勾配は約40°と急峻で資材等は索道を使用しての運搬施工でした。現場全域が急斜面なため、土留工の掘削以外は主に人力施工による作業の現場でした。

工事概要

2.工事概要

工事場所
高知県 吾川郡 いの町 勝賀瀬
工期
平成24年3月9日〜平成24年12月18日
契約金額
57,829,800円
工事内容
土留工(鋼製自在枠)2基 L=86.0m
水路工(鋼製) L=38.0m
柵工(木柵) L=584.0m
伏工(植生マット) A=1017.5m2

3.課題・問題点

@鋼製自在枠への詰石の運搬方法

重量のある詰石を荷下し場から、最大30m運搬しないといけないが、作業スペースがないため、重機を使用することも詰石を仮置するスペースもなかった。

鋼製自在枠への詰石の運搬方法

A鋼製自在枠の品質向上

5cmから15cm規格の石材を中詰めする鋼製自在枠の土留工は、安定計算に重量が含まれており、 いかに土留枠内に空隙を少なく石材を詰め鋼製自在枠の品質向上を図れるか。

B盛土部での木柵の品質確保

盛土部への木柵施工は、地山とは異なり杭の支持力低下が懸念された。

C急斜面にL=584.0mもの人力施工が必要な木柵の工夫

急斜面での人力作業は作業効率を著しく低下させ労働災害に繋がる恐れがある。

D安全対策

斜面での作業が多いため、安全対策の必要があった。

4.課題への対応策

@鋼製自在枠への詰石の運搬方法

従来は鋼製枠の前に詰石を置いて運搬し、重機にて投入するのが一般的ですが、作業スペースがな いこの状況で、重量のある詰石を357m3、約571tも運搬しなくてはなりませんでした。
鋼製自在枠の特徴として、鋼製自在枠は直線で、なおかつレベルで勾配がないということです。
そこで考えたのがレール工法です。詰石を入れた搬器(1.0m3)を主索直下に下ろし、台車に乗せて横移 動させて投入する施工方法です。従来の施工方法では、重機にての積込み・投入が必要ですが省略 できることから、異物の混入等も防ぐこともできます。このレール工法で30mの距離も安全で容易に端部 まで運搬でき、必要量を必要な場所に効率よく運搬施工することができました。

鋼製自在枠への詰石の運搬方法


A鋼製自在枠の品質向上

当現場の鋼製自在枠の中詰材(栗石)の安定計算書を確認したところ、単位体積重量は1.6tにて安 定計算されていました。そのため、まず事前に使用する予定の中詰材の単位体積重量を測定し1.68t で満足していることを確認しました。単位重量的には問題はありませんが空隙が多くなると、設計重量 を満足できない値であると判断し、設計はバックホウの投入のみであるが人力にて敷均しを行い50cm毎 に確認し空隙を最小限に抑えて鋼製自在枠(H=3.00m)の品質向上に努めました。
この結果、埋戻しや盛土施工を行っても変動もなく鋼製自在枠の品質及び出来形を確保することができました。

鋼製自在枠の品質向上


B盛土部での木柵の品質確保

要望に対する工法提案

杭木が地山に挿入する延長の少ない箇所(盛土部)にお いて、杭を打込むと地山とは異なり杭に支持力がありません でした。施工地の勾配が緩ければ支持力の弱さを懸念する 必要も薄いですが、仕上がり勾配が40°なので埋戻・盛土 を行った直後に大雨が降れば、雨水を含んだ土砂の土圧 による倒壊が懸念されました。
そこで、支持力の弱いと思われる137mの木柵強化を図り ました。まず、人力にて40cm幅を拡大掘削します。人力です が盛土部なので比較的容易に掘削できます。次に杭を2m 間隔で約1.3m打込み横木を添わして木柵と結束することで、 土圧等による変動を解消し品質を確保しました。

盛土部での木柵の品質確保


C急斜面にL=584.0mもの人力施工が必要な木柵の工夫

急斜面にL=584.0mもの人力施工が必要な木柵の工夫

丸太柵工を通常の丸太を使用すると、丸太の直径が木によって異なることから、丸太の向きを変えたり寸法の確認も必要になります。この作業を足場が悪い急斜面で行うことは、労働災害に繋がる危険性が高く作業効率も著しく低下します。そのため、太鼓挽き材を採用しました。太鼓挽き材とは丸太の上下2面において、曲線部を半円形にカットして一定の高さに加工した材料です。丸太の方向を気にせず5段積めば規定の高さが確保されるため、柵工での工程の短縮 、出来形及び出来ばえの向上、作業員の疲労及び法面作業の低減が図れました。

C安全対策

柵工施工時は斜面での移動が多く、人が歩くだけで小石等の落下が発生して事故が予想されました。
このため、センターに設置されているコルゲート水路に足場板を2列配置して滑り桟を打ちつけて親綱を設置 しました。これにより法面での土砂移動を大幅に減少させ落石等による危険への安全性を高めれたと 思います。また、盛土直後の施工箇所への大雨は、土砂流出の危険があったので、天気と工程には 特に気を配り施工しました。運悪く盛土直後に大雨が予想された箇所にはブルーシートを設置して対応し ました。上下作業や禁止や安全帯の着用など基本を忠実に守り無事故にて工事を完了しました。

安全対策

5.終わりに

治山の山腹工は斜面での人力作業が多いため、安全な施工方法を常に考え思考します。しかし、安 全な施工方法でも効率が悪いと作業日数が増えるため事故に繋がる確率も上がることになります。
安全と施工性、経済性を考え現場に適した施工方法の選定がこの職業を選んだ方の日々の課題とな る気がします。  
最後に、発注者ならびに工事関係者の皆様のご指導、地元地区の皆様のご理解、ご協力を得て無事故・無災害にて工事を竣工することができました。この場をお借りして感謝を申し上げます。これからも、安全・品質を心がけ土木技術者としての仕事に取り組んでいきます。  
どうもありがとうございました。

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